お母さんいまどこに・・

今年初めに母親を自死で亡くしました、最後に電話で話したのは娘の私でした。

行きたかった場所

帰ったらずっと行きたいと思っていた場所

母の好きな物と白い花束を持って1人

そこは母の見つかった場所


自宅からあの日のように堤防沿いを行く

この長い道を川を母がたどっていったんだと涙が次から次にこぼれた

寒い冬が過ぎて

堤防にはアザミやシロツメクサが咲いていた

緑がたくさん溢れていた


海まで400メートルのその場所も

緑がおいしげり

あの日のことを忘れたかのよう

草やぶをかきわけ川岸についた

花を手向けお供えをした

手を合わせて

お母さん帰ってきたよ

もう遠くへは行かない

こうやって時々ここで会えるね


この場所へ誰にも知られず

1人で来たかった

母の月命日には毎月


帰りにアザミを摘んで帰った

葉っぱのトゲが

これが夢ではないと指を刺した

お線香

母に会いに帰った

もしかしたらいつものように

座っているかもしれない


玄関に入ったとたん

私の期待は裏切られる

懐かしい母の香りはなく

かわりにお線香の香り

寂しい気持ちになる

もちろん母はいない


たまらずタンスを開けて

赤いカーディガンを出した

母が微笑んでいる


帰省したからと言って

何かしてもらったり

ご飯を作ってもらうわけでもなく

好きな物を一緒に食べて

母がそこにいる

ただそこにいるだけで良かった


私は生きている

まだ幼い息子を悲しませないと

あの時命をたたず生きてる


私が弟が悲しまないと思ったのか

それより病気のほうが辛かったのか

いや私達に迷惑をかけているのが辛かった

また何かして私達をきづつけるのが怖かった

母も辛かったに違いない

私達のために命をたった

最後まで母親でありたかった


そう思いたい

この悲しみは辛さは苦しみは寂しさは

いつまで続く


今日は堤防へは行かなかった

小さな息子が言う

母ちゃんが泣かないように

川にいるばあちゃんを僕が助けてあげる

一緒には行けない連れては行けない

夢でもいいから

桜が散りはじめてほっとする

母の事を知らない人が花見に誘う

なんて断れば良いのだろう

母の事を知ってる人も花見に誘ってくれる

なんて断れば良いのだろう

雨が降って風が吹いてほっとする


10年ぶりに入院した母

小さな私を抱いた写真はすらっとしていた

投薬をはじめて40年副作用か

洋服のサイズは3Lだった

入院して1年もたたず体重は20キロ痩せた

面会に行く度に痩せている

見るのが辛かった、不憫だった

体に合わない洋服を

買い直してあげた

薬が強かったのか

食事は流動食になっていた


細くなった体で寒空に身を投げたのか

お棺の中にますます小さくなった母がいた

あの時の母を思い出して

あの手を思い出して

突然涙が溢れる

掃除機をかけていても

お風呂に入っていても


私の夢にはまだ母がでてこない

夢でも良いから

もう1度

私の名前を呼んで欲しい

あの日のように一緒にたこ焼きを食べよう


お母さんもうすぐ会えるね

母の面影

母の家

母の匂い